【心不全とは】
心不全とは心臓と全身のバランスの崩れにより呼吸困難や、浮腫などが引き起こされた状態であり(症候)、単一の疾患ではありません。そのため心不全の発症は、単に心臓の機能の低下だけではなく(もちろんそれも重要な要素ですが)、心不全を引き起こす全身の状態が重要となります。
多くの場合治療により改善しますが、完全に治癒するわけではなく、心不全を繰り返しながら徐々に全身の機能が低下してくる進行性の全身疾患である考えられます。
【予後】
超高齢化社会を迎え、今後心不全は非常に増加すると懸念されています。
心不全の5年生存率は
リスクを保持している方(stage A)で97%
心臓の器質的変化はあるが無症状の方(stage B)で96%
現在もしくは過去に心不全症状を発症した方(stage C)で75%
専門的な侵襲的治療を要する方(stage D)で20%
とも言われています(Ammar KA et al. Circulation 2007;115:1563-70.)。
【原因】
①心臓の要因:心筋梗塞、心臓弁膜症、不整脈、心筋症、先天性心疾患、心臓の拡張障害など
②心臓以外の要因:高血圧症、腎疾患、肝疾患、甲状腺疾患、貧血、喫煙、肥満、加齢、感染症など
…心臓の収縮力が良好な方でも心不全を発症することがあります。
【自覚症状】
急激な血圧上昇で急に心不全が悪くなると、横になっていられないほどの非常に強い呼吸困難を自覚することがあります。呼吸困難により更に血圧が上昇し、益々症状が強くなることもあります。
慢性的な心不全だと、四肢や顔面に浮腫をきたして体重が増加したり、少しの活動で息切れや動悸を自覚することがあります。
【検査】
診断のため、胸部X線写真検査、心電図検査、心臓超音波検査、血液検査などを行います。
心不全の原因検索のため、胸部や腹部のCT検査、 ホルター心電図検査、経食道エコー検査、心臓カテーテル検査、心臓CT検査、心臓MRI検査、心筋シンチグラフィ検査なども必要に応じて施行されます。
【合併症】
肺うっ血による低酸素血症や、心室頻拍/心室細動といった致死的な不整脈、全身の循環状態が悪化することによる腎障害や肝障害、脳梗塞などを合併することがあります。
【治療】
心不全の治療は心不全そのものに対する治療のほか、原因となる疾患があればそれを治療することが非常に重要です。
また、SGLT-2阻害薬、ARNIといった新しい心不全治療薬が使用できるようになっており、効果が期待されています。
・急性期の治療:安静、酸素吸入、機械的な呼吸補助、利尿剤、血管拡張薬、昇圧剤などを適宜組み合わせて治療します。
・慢性期の治療:薬物療法(β遮断薬、RAAS系降圧薬、利尿薬、血管拡張薬、強心薬)のほか、禁煙、減量、適切な運動、筋力維持、在宅酸素療法などを行います。