禁煙について

【タバコについて】
タバコによる健康被害が報告されて久しく、世界中で多くの研究がなされ、具体的にタバコにどれくらいの危険性があるのかも分かってきました。
幸い多くの方はタバコの危険性を認識されています。しかし、残念ながらいまだに喫煙習慣のある方が多いのも現状です。また、電子タバコや加熱式タバコは、さも健康への影響が少ないような宣伝を行っていますが、最新の研究では従来のタバコと同様に危険性が高いものと考えられています。

【タバコの成分】
タバコに含まれる有害物質として「ニコチン」「タール」といった成分はよく知られています。しかし、市販されているタバコは様々な添加物が含まれており、約70種類の発がん性物質、約200種類の有毒物質、約4000種類の化学物質を有しています。
**タバコに含まれる代表的な発がん性物質**
ダイオキシン類、カドミウム、ヒ素、ニッケル、ポロニウム、ニトロソアミン類、塩化ビニルなど

【ニコチン依存】
ニコチンは人間が本来持っているアセチルコリンに分子構造が似てるため、脳内のニコチン性アセチルコリン受容体に直接作用して、ドパミンを過剰に放出させます。過剰なドパミンのバランスを取るため、脳内のドパミン受容体が閉じてしまうため、ニコチンが切れるとドパミンが不足してイライラし、更にニコチンを必要としてしまい、ニコチン依存が形成されます。ニコチンの依存性はヘロインやコカインより強く、使用中止の困難さはこれら薬物と同等であるといわれています。
また、タバコやタバコを包む紙、フィルターにはアンモニアを始めとして、依存性を強める様々な添加物が含まれています。

【タバコとPM2.5】
PM2.5とは粒子径2.5μm以下の微粒子で、大きさが非常に小さいため肺の奥深くまで入り込みやすく、肺だけではなく全身の炎症を惹起し、呼吸器系/循環器系疾患による死亡率が上昇します。
大気中のPM2.5の濃度は環境省の基準で「1年間の平均値が15µg/m3以下、かつ1日の平均値が35µg/m3以下」と定められていますが、タバコの煙にはPM2.5が高濃度で含まれているため、自由に喫煙可能な店舗での濃度は約600µg/m3、窓を閉めた自動車内で2人が喫煙すると約1600µg/m3にも上昇します。これは中国や米国では厳重汚染とされてる250~500µg/m3をはるかに超える濃度です。
大気中のPM2.5濃度が10µg/m3上昇すると年間の全死亡数が6%上昇します。
PM2.5の急性短時間曝露では、10µg/m3の上昇で1%の全死亡率が増加するため、このような環境で毎日数時間働く人や、店舗を利用する人の全死亡リスクは数十%も上昇することになります。

【喫煙と疾患】
タバコは様々な疾患の原因になります。
現在、タバコとの因果関係が科学的に確実と考えられている(レベル 1)疾患は
がん:鼻腔・副鼻腔がん、口腔・咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肺がん、
   肝臓がん、胃がん、膵臓がん、膀胱がん、子宮頸がん
脳血管疾患:脳卒中、虚血性心疾患(心筋梗塞/狭心症)、腹部大動脈りゅう、
   閉塞性動脈硬化症
呼吸器疾患:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸機能低下、結核死亡
周産期の問題:早産、低出生体重、胎児発育遅延
その他の疾患:2型糖尿病の発症、ニコチン依存症、歯周病

他にもアルツハイマー型認知症(リスク 2.36倍)、インフルエンザ罹患(21本/日以上の喫煙で2.85倍)、インフルエンザ重症化(21本/日以上の喫煙で2.68倍)、透析導入(20本/日以上の喫煙で2.3倍)、パニック障害(リスク 3.96倍)、睡眠障害(リスク 2.32倍)、自殺(15本/日以上の喫煙で4.3倍)など、様々な危険性を上昇させます。

【電子タバコと加熱式タバコ】
電子タバコはカートリッジ内の液体を気化させ、蒸気を直接吸い込むもので、ニコチンを含むものと、ニコチンを含まないものがあります。日本国内ではニコチンは医薬品医療機器法により劇薬指定を受けているため、ニコチンを含むものは違法薬物になります。

加熱式タバコはタバコの葉を加熱してニコチンを染み出させて吸うもので、たばこ事業法の規制対象品となります。

加熱式タバコは「有害成分が低減した」と宣伝してます。しかし、例えば加熱式タバコによりニコチンは84%減少したと宣伝していますが、ラットの実験で加熱式タバコは従来のタバコよりニコチンの血中濃度が4倍上昇したという報告や、血管内皮障害の程度は加熱式タバコと従来のタバコで同等であるとの報告があり、“有害成分の減少”と“有害性の低下”は意味が全く違うものなのです。

ニコチンを含まない電子タバコも溶液を気化させるために使用するアルコール類が加熱により編成し、ジエチレングリコール、ホルムアルデヒドなど多くの有害物質が発生していることが確認されています。

また、加熱式タバコのカートリッジは従来のタバコより小さいため乳幼児の誤飲事件が増加し、国民生活センターから注意喚起が出されるなど、加熱式タバコや電子式タバコは従来のタバコと比較してもより危険性が高い可能性もあると言われています。

【禁煙について】
禁煙には短期的な効果と長期的な効果があり、すべての喫煙者に健康上好ましい変化がもたらされます
禁煙後
  20分以内;血圧と心拍数が低下
   12時間;血中一酸化炭素値が正常値まで低下
  2-12週間;血液循環が改善し、肺機能が高まる
   1-9か月;咳や息切れが減る
     1年;冠動脈性心疾患のリスクが喫煙者の半分に低下
     5年;禁煙後5-10年で脳卒中リスクが非喫煙者と同等になる
    10年;肺がんリスクが約半分に低下
口腔、咽喉、食道、膀胱、頸部、膵臓がんのリスクも低下
    15年;冠動脈性心疾患のリスクが非喫煙者と同等になる
35歳までに禁煙すれば様々なリスクが非喫煙者と同等になるともいわれています。

参考文献
国立がん研究センター がん情報サービス
禁煙学 南山堂
タバコQ & A 東京都医師会